Circus

デス・レース」の翌年、アイヴィ氏はマイクロプロセサの使用技術を身に付け、さらなる成果を披露しています。そのひとつが、「デス・レース」とならぶエキシディの代表作、「サーカス」でした。

「サーカス」は一般的には「ブレイクアウト」(ブロックくずし) から派生したように認識されていますが、ここまでのアイヴィ氏の経歴を見れば、派生品はむしろ「ブレイクアウト」のほうであって、「サーカス」こそ「クリーン・スウィープ」から正統進化したものだったということがお分かりいただけるでしょう。このゲームは「風船割り」の通称で、とりわけ日本で人気を集めました。タイトー営業部はこの「風船割り」のヒットに目を留めて、「ブロックゲームと風船割りゲームの特徴を持ったヒット商品を是非提案して欲しい」(『電視遊戯大全』より引用) と西角友宏氏に要望。これが「スペース・インベーダー」開発の発端となりました。

「サーカス」はまた、電子メロディによりインパクトを与えた最初のヴィデオゲームであるともいえるでしょう。メロディの演奏そのものは、すでにアタリの「スティープル・チェイス」 (1975) が実現していましたが (最近まで「サーカス」が最初だといわれていましたが誤りです)、これは競馬のファンファーレをゲーム開始時に演奏するだけで、「サーカス」ほどに強迫的な存在感を持つものではありませんでした。

なお、アイヴィ氏は「サーカス」とほぼ同じ頃に、「ロボット・ボウル」というボーリングゲームも手がけています。これはおそらくヴィデオゲーム史上最初のボーリングゲームではないかと思いますが、それ以上に特筆すべき点はありません。おそらくアイヴィ氏にとってはマイクロプロセッサの小手調べのような作品だったのではないかと思います。