Tank-8

まだアタリを興す前、ノラン・ブッシュネル氏はヴィデオテープを発明したことで知られるアンペックスという会社に勤めていたことがあります。彼はそこでスティーヴン・メイヤーという凄腕エンジニアに出会い、その才能に感銘を受けていました。

アタリ設立後の1973年、メイヤー氏は同僚のラリー・エモンズ氏とともにアンペックスを辞し、シアン・エンジニアリングというコンサルタント会社を設立します。アタリはすぐに彼らの技術を積極的に活用しはじめ、やがて独占契約を締結しました。シアン・エンジニアリングはアタリのシンクタンクとして、技術的な難問の解決に大車輪の活躍を見せ、まもなくその所在地「グラスヴァレー」が愛称として使われるほど身近な存在となっていきます。

前述のブリストウ氏による発明も、実はメイヤー氏との共同研究によるものでした。ブリストウ氏はその後アーケード部門のエンジニアリング責任者に任命され、表立ってゲームデザイナとして活躍することはなくなるのですが、キャラクタ表示に関する研究は、メイヤー氏とグラスヴァレー・チームがしっかりと引き継ぎました。そして1975年の終わり頃までに、背景とキャラクタの処理システムを二分化し、水平帰線期間を活用してこれらを合成するというスプライトの基礎を、ついに確立するのです。この技術はのちに「ヴィデオ画面に移動オブジェクトを多数生成する方法」という特許になっていますが、製品としてはじめて実用化したのは、メイヤー氏らが自らデザインした「タンク8」 (1976) でした。アタリが初めてマイクロプロセサを採用したことで知られる、8人対戦型の戦車ゲームです。