Advanced PICO Beena 今夏発売

エデュテイメントという言葉が流行らなくなってずいぶん経つので、もうこのジャンルは死滅したのかと思われがちです。たしかに10代以上を対象とする教育ゲーム研究は、長い間特筆するほどの成果を上げられずにいるわけですが、逆に幼児向けの分野におけるエデュテイメントは、いまさら騒ぐ必要もないほど定着してしまったというのが現実でしょう。セガトイズ・PICOの成功は、何よりそれを雄弁に物語っていますし、リープフロッグやVTechの活躍も見逃せません。

ところでメガドライブをベースアーキテクチャとするPICOこそは、国内大手が展開する最後の16-bitプラットフォームだったわけですが、その12年の歴史にいよいよ終止符が打たれる日が来たようです。セガトイズは数日前、アドバンスドPICO「ビーナ」という後継機を今年8月に発売するとアナウンスしました。海外の話題ではありませんが、プレスリリース以上のことを書いているところがないようなので、この場でちょっと詳細を分析してみます。

まず中枢部ですが、アプローズテクノロジーズの新型SOC-LSIAP2010を採用するということで、旧PICOとの互換性は考慮していなさそうです。BG+スプライト方式で最大3万2000色、それでCPUはARM7となると、全体的な性能はゲームボーイアドバンスに近いものになりそうですね。ただしCPUクロックは81MHzと、5倍近く速いです。また音源もウェーヴテーブル32音ということで、2倍程度豪華です。ちなみにアプローズテクノロジーズは、かつて日立でSH-4 (DreamcastのCPU) を手がけた阪口幸雄氏が率いる新進ヴェンチャ企業。アミューズメント機器や玩具を主眼に置いたアプローチには、新世代株式会社に一脈通じるものがありそうです。

ビーナの特色のなかでもっとも気になるのは、やはり「TVにつないでも、つながなくても遊べる」という点でしょうか。Nintendo DSみたいなタッチパネル液晶式のものが来ると思い込んでいる人が多いようですが、プレスリリース中の写真を見るとどうもそういう趣向ではなく、PICOとココパッドを融合したような性質と見受けられます (念のために書いておきますが、AP2010の仕様書にTFT/LCD出力への言及はありません)。DSみたいなものはDSそのものより先にリープスターが実現しているわけで、セガトイズとしては衝突を避けたい意図もあったのでしょう。しかしインパクトはちょっと弱いかもしれませんね。

初年度目標の25万台というのは、昨年におけるPICO販売台数の3倍程度にあたる数字です。爆発的なブレイクは狙わないが、着実なペースアップを目指そうという思惑が感じられます。バンダイ、タカラ、トミー、エポックといった玩具最大手は引き続きサードパーティとして名を連ねていますし、これもまた息の長いハードになりそうですね。