Ernst Zermelo のチェス定理

話は少し逸れますが、アヘドレシスタが披露された翌年には、「チェスには先手必勝か、後手必勝か、必ず引き分けになる戦略が存在する」ことを証明した、エルネスト・ツェルメロのゲーム定理も発表されています。ツェルメロはチェスのプロブレムが数学的に検証できることを踏まえ、チェスそのものにも同じことがいえるかどうかを突き止めようとしました。彼が興味を持ったのは、必勝状態なら何手以内で勝つことができるかということであって、どうすれば勝つことができるかではなかったということには、注意しておく必要があるでしょう。その考察はしたがって、戦略アルゴリズムや局面の評価とはまるで無縁の内容になっています (彼はゲーム木を逆から辿るのに似た後方帰納法と呼ばれる方法で証明を行ったと信じられていますが、近年の調査によってそのような事実はなかったことが明らかにされています)。こういった純論理的なゲーム研究は1920年代から盛んになり、やがてノイマンらによる近代ゲーム理論の基礎を形作ります。