The Spectacular Rise and Fall of Commodore 近日出版

コモドールの歴史を綴った書籍は不思議なくらい数少なく、アミーガ発売前夜にマイケル・トムチュク氏が記した『The Home Computer Wars』がほとんど唯一のものだったりします。一時とはいえホームコンピュータ市場を制したこの会社が、史学的にさほど重視されていない現状は本当に困ったものなのですが、間もなく発売されるという『The Spectacular Rise and Fall of Commodore』は、そこに光を当ててくれる一冊になるかもしれません。

トムチュク氏がマーケティングの立場から見たコモドールを描いたのに対し、ブライアン・バグナル氏のこの本は、主にエンジニアたちの立場から、コモドールという会社の性格を浮かび上がらせようとしています。44時間を超えるというインタビュの一部がホームページで紹介されているのですが、これを読むだけでもその波乱に満ちた内情を覗い知ることができます。


「ジャック・トラミエル (元社長) は人の話を注意深く聞いていなかった」チャック・ペドル (6502 CPU/PET 2001デザイン担当)

「彼は指図を受けるのをあまり好ましく思っていなかったのではないかな」レオナード・トラミエル (ジャック・トラミエル氏次男) によるチャック・ペドル評

「彼は本当に聞き下手だったよ」アル・シャルパンティエ (VIC/コモドール64のチップデザイン担当) によるジャック・トラミエル

「彼は私も私の家族も滅茶苦茶にしてくれた。ありとあらゆる嫌なことをしてくれたよ。しかし誰もやらせてくれないようなことをする機会を与えてくれた。それは記憶に残ることだし、感謝もしている」チャック・ペドルによるジャック・トラミエル

「僕がデザインしたものを好きな人がいるって知るのは嬉しいよ」ロバート・ヤンヌス (SIDチップ開発担当)

「彼はコンピュータビジネスに身を置くべき人間ではなかった」デイヴ・ヘイニー (アミーガ2000/3000/4000開発陣) によるマーシャル・スミス (元社長) 評

「ある晩マーシャルを一発殴ったんだ」ビル・ハード (コモドール128/Plus4デザイン担当)

マイクロソフトとコモドールの関係はいいものじゃなかった」チャールズ・ウィンタブル (元エンジニアリングマネージャ)

「スティーヴ・ジョブスのいいところもなく、ビル・ゲイツの悪いところもない。彼はひたすらトップ・ビジネスマンだ。勝つまでやめない。こういっては失礼だが、株主たちはあらかじめそれを知っていた」チャック・ペドル

「彼は勇猛果敢な男で、それは勉強になった。私はやってはいけないことを数多く学んだ。たしかに彼の轍を踏まないようにしているつもりだが、それは会社を始めるにあたってはよいトレーニングにもなった」アル・シャルパンティエによるジャック・トラミエル

「守衛たちは私を敷地に近付けないよう言われていた。自分のオフィスに行ってみると、連中がドアの鍵を換えて入れなくしていた。帰ってくれとお願いされたさ」トーマス・ラティガン (元社長)

「ああ、なんて信じがたいことをしてしまったものか」R.J.マイカル (アミーガ開発陣)

「二度と一緒に仕事をしないことになってせいせいする男がいる。通り道にあるものをすべて破壊する奴さ。友人だった人間でさえもね。ビジネスに清潔なやりかたと汚いやりかたがあるとすれば、彼は汚い道を選ぶんだ」R.J.マイカルによるジャック・トラミエル
「ジャック・トラミエルのことは本当に気に入っていた」アル・シャルパンティエ

ここには記されていませんが、ジャック・トラミエル氏本人にも (レオナード氏を介して) お話を聞いているとのこと。またコモドールの実質的支配者だった故アーヴィン・グールド氏にもインタビュしているそうです。主観を交えないよう気をつけて書いているとのことなので、一時資料としての価値がきわめて高い本であることは間違いありません。価格は35ドルで、今月中にも購入可能になる見通しです。