Capcom Bowling 〜 Golden Tee 3D

このようにインクレディブル・テクノロジーズはミッドウェイの血脈に連なっているわけですが、1990年代初頭までは「Qバート」のサウンドを手がけた元ゴットリーブ社のデヴィッド・シール氏も主要メンバーとして活躍していました。設立当初はヴィデオゲームを開発しておらず、しばらくはデータイーストピンボール開発 (主にプログラミング) に協力したりしていたようです。ヴィデオゲームメーカーとして台頭しはじめるのは、1988年に開発した「カプコンボウリング」からです。このゲームは北米において大きな成功を収めました。日本でもそこそこ出回ったのでご存知のかたも多いでしょう (ところで皮肉なことに、MGAはこの年倒産しています)。

インクレディブル・テクノロジーズはこれを契機に、ヴィデオゲーム専門の企業へと転向し、社名をストラタに変更しています。「ゴールデン・ティー・ゴルフ」の第一作目が披露されたのはちょうどこの頃のことでした。しかし以後はめぼしいヒット作を生み出すことができず、業績は低迷。1995年には社名をインクレディブル・テクノロジーズに戻し、再建に向かって動きはじめます。この頃ストラタの名前は「タイムキラー」「ブラッドストーム」の2作により残虐ゲームメーカーとして売れていたので、改名の背景にはそこから脱却を計る思惑もあったのでしょう。

この1995年前後の低迷期のどん底にあるのが「ストリートファイター・ザ・ムービー」なわけですが、彼らはこれと前後して、起死回生のヒット作を生み出すことにも成功していました。それが「ゴールデン・ティー3D」です。この作品は主にバーを中心とするアダルト向けのロケーションを席巻し、インクレディブル・テクノロジーズは一躍その分野のトップブランドとして認知されるようになりました。この会社が停滞著しい北米のアーケード産業で成長を維持し続けているのは、アダルト向けスポーツゲームに焦点を絞った地道な開発努力と、むやみにトレンドを追いかけないMGAの気質を受け継いだ家庭的経営の賜物でもあるといえそうです。