アタリ仕様ジョイスティックポートの起源

1月9日に左ボタンジョイスティックの話を書きました。あれから気になって昔のジョイスティックについていろいろ調べていたのですが、いわゆる「アタリ仕様」の大元になっている、9-pin/D-Subジョイスティックコネクタ。このルーツがどこにあるのか、もうひとつはっきりしないのです。「アタリ仕様」と呼ばれてはいますが、アタリ以前からあった形状だということは間違いありません。それじゃ9-pin/D-Subは、もともと何に使われていたコネクタなのでしょうか。

賢明な読者のかたからは、RS232Cに起源があるのじゃないかという声が聞こえてきそうですが、これはどうも違うようです。たしかにEIAがこの規格を発表したのは1969年で、アタリVCSよりひとまわり昔です。しかしRS-232-Cはあくまで転送方式の規格であって、実はコネクタの形状までは定めていないのです。初期のRS-232-Cに使われていたのは25-pin/D-subのコネクタだけで、9-pin/D-subが用いられるようになるのは、もっと後のこと。結局いくら調べても明解な答えが見当たらないので、rec.games.video.classicで質問してみることにしました。

…残念ながら、具体的な起源はやはり分からずじまい。しかし、1962年の時点でなんとこんなものに使われていたというご回答をいただきました。宇宙開発についてはまるで無知なのですが、こちらの記述によると、かなり初期の通信衛星だそうで、東京オリンピックの衛生中継などに活躍したようですね。ヴァージニアに新設された航空宇宙博物館で、そのプロトタイプの内部を確認できるそうです。で、これの製造開発はRCAとのこと。RCAといえば、当時最高峰の技術を誇っていた映像/音響/放送機器メーカーで、これ以前にもRCAプラグ業界標準にしてしまった実績があるので、妙に納得です。

ところでご存知のかたも多いでしょうが、RCAはアタリVCSに先駆けて「スタジオII」というカートリッジ式ゲーム機を発売していました。これは本体とコントローラが一体化していて、ジョイスティックポートなんてものはありません。それにしても、自社が開発したであろう仕様をアタリに先取りされてしまうとは、なんとも皮肉な話ですね。