コモドールPET/CBM 名称考察

PET2001に始まるPET/CBMシリーズは、一見名称にあまり統一性がないように見えるので、どれがどれやら混乱しがちです。

そもそもPETというのはいったいどういう意味なのでしょうか。表向きには「Personal Electronic Transactor」という、いかにもビジネス機然とした呼称の略ということになっていますが、実は名前にルーズなコモドールらしい由来があって、もともとはPET2001の製造前年に大流行していた「Pet Rock」にひっかけたものだそうです。このPETを頭文字にして後からもっともらしい意味をこじつけた…というのが通説になっていますね。

ふざけたネーミングが祟ったのか、コモドールはヨーロッパ市場でPETの名前を放棄しなければならないはめになります。というのは、オランダのフィリップスがPETという商標名をすでに使用していたからで、コモドールは仕方なく、CBM (Commodore Business Machine) というかつての社名そのままの略号を、ヨーロッパモデルのPETに与えています。

ヨーロッパがホビーよりもビジネスが先行する土地柄であることをコモドールは熟知していたので、CBMシリーズではキーボードを構造強化するなどビジネス向けの改良を行い、モデルナンバーも2000番台から3000番台へと移行しました。もっとも基本仕様はPET2001となんら変わっていません。

CBMシリーズは、その名称のままで、日本やアメリカにもビジネス仕様PETとして上陸してくることになります。アメリカではPET2001の後継機種・PET4000シリーズが教育分野で普及を果たし、ホビー/教育用途はPET、ビジネス用途はCBM…という住み分けが比較的うまくいったようです (Apple IIが台頭してくる以前は、PET4032が教育分野の主役でした)。しかし教育分野でのパソコン普及が進んでいなかった日本では、両者の役割分担が非常にあいまいになってしまったのです。PET/CBMラインナップがなにやら混沌としているように感じるのは、このためです。

(ちなみにPET2001では4KB RAM搭載機を2001-4, 8KB RAM搭載機を2001-8...というように表記していたのですが、CBM3000番台からは3016が16KB, 3032が32KBと、下二桁がそのまま搭載RAM容量を表すようになっています。このへんも混乱の種ですね)

そしてこの後CBM8032/CBM8096が登場するわけですが、先にも述べたように失敗に終わりました。さらにCBM8000シリーズを研究機関/開発者向けにチューンした特殊モデル・SuperPET 9000 (ヨーロッパではMicro-Mainframe 9000) が登場しますが、PETの命脈はここで断たれます。コモドールのビジネス機は、以後CBM500/CBM600/CBM700といった、まったく互換性のない別シリーズが引き継いでいくことになります。