草の根BBS復興の史学的意義

日本の草の根BBS総数は、最盛期には約3000局を数えました。しかしインターネットの普及にともない、21世紀に入るまでに大半が姿を消します。一口に草の根といいますが、その規模は十数人単位から数万人単位までさまざまで、規模は小さくとも特定分野に秀でるというコミュニティも多く存在していました。失われた情報の総量は、途方もないものになるはずです、もちろんその大半は、今日から見れば何の役にも立たない古びた内容ではあるでしょう。しかし8-bit/16-bit機全盛期のリアルタイムな視点が、歴史を紐解く上での重要なヒントになることはありえます。

たとえばX68000というパソコンは、草の根BBSを拠点とするパワーユーザーたちが生み出した、膨大な量のフリーソフトライブラリに大きく支えられていました。しかしパワーユーザーたちの活動の痕跡が完全に失われてしまった現状では、あのX68000シーンの活気の源泉がいったいどこにあったのか、客観的に分析することさえなかなか容易ではないのです。

ようするに、草の根BBSが蘇ることではじめて、パソコン通信とは何だったのかを (思い出話という枠を超えて) 再検証できるようになるのではないかと思うわけです。上で紹介した草の根BBSたちは、全部が全部そういう史料的価値を持つわけではなく、なかには単なる内輪話に終始しているものもあります。しかしそれでさえ、往時の通信手段がどのようなものだったかを追体験する足掛かりにはなるでしょう。