初代ワンチップ2600
実のところ、Atari VCSをワンチップ化しようという試みは、もっと昔からあって、技術としてはすでに完成していたりします。これについて著名な8ビット機リバースエンジニア・ケヴィン・ホートン氏が、興味深いエピソードを紹介しています。
(前略) アタリはAtari2600Jr. (訳注:80年代中期以降に流通するAtari VCSの廉価モデル。1992年まで製造) の後期モデルに搭載するために、リコーに正真正銘の「ワンチップ2600」を作らせました。形状は64ピン・シュリンクDIP。
このカスタムチップの型番は、面白いことにファミコンのプロセッサと非常によく似ています… (ファミコンのプロセッサチップはRP2A03で、ワンチップ2600はRP2A10)。だから私はリコーの製品ラインナップに「6502コア + 顧客の要望にあわせて基本機能を追加できるカスタムロジック」という構成のチップが『スタンダード』としてあり、これもそこから生まれたのじゃないかと疑っています。ファミコンの場合は普通の6502コアにオーディオ回路、DMA処理、アドレスデコーディング、分周器ありの割り込みコントロール、3bitアウトプットポートなんかが追加されています。2600チップの場合はもちろん、6502にTIA, RIOTといったカスタムチップの機能が載せられています。
ええええ、RP2A10!? こんなチップ名に言及している文書は、他に存在していないですよ。そういえばたしかに、1987年の台湾製2600Jr.にはワンチップ仕様のものがあります。その実態がファミコンの異父兄弟ともいえるものだったというわけですか。思いもよりませんでした。
ワンチップ仕様2600Jr.の存在は、つい数年前までアタリフリークの間でさえ知られていませんでした。それくらい珍しいものなので、おそらくこのチップはごく少量しか生産されていないのでしょう。おかげで、世界で初めてプログラマブルなヴィデオゲーム機のワンチップ化を達成したという栄誉まで、十数年にわたって埋もれさせることになったわけです。いかにもアタリのコンシューマ機らしい、不遇な話ですね。
というか…あれ? もし新生アタリがワンチップ2600の技術を欲しがっているのなら、こっちを復活させたほうが早いということになりますね。ファミコンの生産が終了しているくらいですから、もはやリコーも受け付けてくれないかもしれませんが、ファブレスの盛んな昨今ではあまり関係ないかな。
(追記: デジタルムーバのM208以降の機種が、ファミコンと同じチップを使っているという噂も見かけました。これも同じような経緯でリコーが手がけたものかもしれません。探せば他にもいろいろ出てきそうな気がします)