シエラ製AVGエミュレータ for ゲームボーイアドバンス 登場

IBM-PC/アミガ用のシエラ製ゲームをGBA用に作りかえるというものなので、エミュレータというよりは帽子屋インサイドが開発しているようなコンバータと考えた方がいいでしょう。「King's Quest」「King's Quest II」「King's Quest III」「King's Quest IV」「Leisure Suit Larry」「Manhunter: New York」「Manhunter 2: San Francisco」「Police Quest」「Space Quest」「Space Quest 2」「Gold Rush!」「Disney's The Black Cauldron」「Mixed Up Mother Goose」「Donald Duck's Playground」の14本が動作します (スクリーンショット)。これらはいずれもSierra On-Line Adventure Game Interpreter (AGI) というアドベンチャーゲーム専用言語で動いているので、GBA版はつまるところAGIをシミュレートしているわけです。ちなみにSarienといって、AGIゲームを自作するためのユーティリティを開発している人もいます。グラフィックアドベンチャー世代のzcodeとでもいえそうですね。

ソフト自体も興味深いのですが、ホームページで語られているオンラインリリースまでの経緯もまた読み応えがあります。もともとこのエミュレータは、ヴィヴェンディ・ユニバーサルゲームス (上記シエラ製ゲームの現在の権利元) に持ち込むつもりで開発されたもので、さんざんたらい回しにされたものの、どうにか実際に交渉の席にまでは辿りついています。しかし開発者のブライアン氏は、それほど好遇されなかったといいます。

昨今はは8-bit/16-bit時代のリメイク作品がGBA用に多数お目見えしていて、いずれも悪くないセールスを記録しています。そこでヴィヴェンディとしてもThe Lost VikingsBlackthorneを移植してみたのですが、どちらも思ったほど売れてくれなかったとのこと。これが歓迎されなかったひとつ目の理由です。ともにアクション主体のゲームなので、アドベンチャーゲームと比較するのはおかしいし、だいたいGBAにはアクションゲームがあふれかえっていて、アドベンチャーのほうが確かに斬新なわけですが、そういう理屈は通用しなかったようです。

もうひとつの理由は、ブライアン氏が「そのまま移植すればカートリッジ一本にシエラのアドベンチャーを全部まとめることができる」と主張したのに対し、ヴィヴェンディはそういう方向性に興味を持たず、グラフィックを今風にアレンジして、一本につき1〜2タイトル収録するほうが好ましいと考えたことです。こうして敢えなく交渉は不成立に終わってしまうのですが、その後ヴィヴェンディは外部に興味を持ちそうなメーカーがないか探すなど、いろいろ協力もしてくれたそうです。しかし結局ブライアン氏は製品として発売することを諦め、こうしてROMコンバータとしての公開に踏み切ったわけです。

ゲームボーイアドバンスの世界では、他の家庭用ゲーム機ではちょっと考えられないほど個人レベルのソフト開発が盛んです。なかにはそこからコマーシャルなプロジェクトに発展していくケースもあって、こういうソフトの持ち込みもわりとよく行われているようです。ブライアン氏のエピソードは、その実態を垣間見せてくれるという点でも興味深いものではないでしょうか。

(追記: シエラのアドベンチャーといえば、鮮やかなMIDIサウンドでも知られていたわけですが、仕様書を見る限りサウンドには対応してないっぽいですね)