エミュレータに理解を示すアムストラッド

その後はもうパソコンについて忘れてしまったかのように見えたアムストラッドでしたが、1999年になって、スペクトラムとCPCのコミュニティに思いもかけない贈り物を届けました。末長く活動する愛好者たちの熱意に打たれ、スペクトラム/CPC各機種の内蔵ROMおよび付属マニュアル類を、エミュレータなどのために無償配布していいという許可を示したのです。アムストラッドは個人開発のエミュレータに理解を示した、世界ではじめての企業になったわけです (シャープがX68000について同様の決断をしたのは、その七ヶ月後でした)。

これを契機にスペクトラムユーザーたちは、かつての市販ソフトについても配布許可を得るべく、ボランティア活動を積極的に展開するようになります。その成果はワールド・オブ・スペクトラムに蓄積され、現在では一万本を超えるゲームやユーティリティをダウンロードすることができるまでになっています。

クリーンなエミュレーションが何を可能にし、逆にまた何を妨げるのか。スペクトラムエミュレータシーンは、それを考えるための重要なモデルを、現在進行形で提示してくれているといえるでしょう。

参考:

Charles da Silva: THE CPC 464