Commodore 64公式エミュレータ 登場

チューリップ・コンピュータによる商標取得以来、今かいまかと言われ続けてきた公式コモドール64エミュレータが、ついに登場しました。PocketPC版は少し前から利用可能になっていたようですが、現在はWindows版も用意されています。価格はともに$24.95。エミュレータのみでこの値段というのはちょっと割高な感じがしなくもありませんが、とりあえず5分間の無償トライアル版で、購入に値するかどうかを確認してみるとしましょう。ちなみにWindows版は要DirectXです。

起動―――まず気になるのはインターフェイスですが、これはなかなかいい線行っているのではないでしょうか。ドラッグ&ドロップ非対応なのはいただけませんが、わりと直観的に使用できるとは思います。

次に肝心の再現性ですが―――残念ながら、まだいろいろ不備を抱えています。目立つのは画像まわりで、ざっと試してみたところ、一部のデモで明らかに画面が崩れました。色調の調整も全体にあまい気がします。コモドール64エミュレーション最大の難関であるサウンドについては、さすがに完璧は期すべくもありませんが、一応フィルタ効果も再現しようと頑張っています。フィルタのオン・オフをスイッチひとつで設定できるのは面白いですね。それから擬似ステレオ設定が可能というのも、他には見られない特色です。

しかしこのエミュレータのもっとも興味深い箇所は、なんといってもBIOSです。ここに公式の意義が集約されているといってもいいでしょう。実をいうとコモドール64は、ZXスペクトラムやアタリ800といった同世代の他の人気機種と違って、これまでインターネットから合法的にBIOSを入手する手段がありませんでした。しかしこの公式エミュレータは、無論合法のBIOSとともに提供されているのです。公式リバイバルの実質的なお膝元であるアイアンストン・パートナーズは、既存のコミュニティを弾圧するつもりはないという意思を表明してはいますが、やはり完全に合法なエミュレータが存在するという安心感は大きいのではないでしょうか。

さてこのBIOS。これまでリリースされたさまざまなバージョンのみならず、なんとこのエミュレータ用に開発された新型まで含まれています。どのような新機能が実装されているのかはまだ分かりませんが、起動直後に "COMMODORE 64 BASIC X2" という見なれない文字を見たときにはびっくりしました。これを解析するためだけに購入してしまう人も、強者ぞろいのC64シーンには大勢いそうです。

ところでチューリップは昨年暮れに、ヤーロニモという会社にコモドール関連の権利を売り渡したはずなのですが、なぜこのエミュレータのページにはチューリップのマークがあるのでしょう。謎めいています。