PDP-8互換機キット・SBC6120 発売中

いや驚きました。こんな衝撃的な物が、三年前に人知れずアナウンスされていたなんて。かつてDECがIBM-PCの対抗馬として発売していたDECmateというワークステーションがあるのですが、これに搭載されていたHD-6120 (Harris) というCPUで、PDP-8互換機を製作しようという代物です。フルキット ($350) からドーターボードのみ ($9) まで数種類のキットが利用可能なほか、別売でPDP-8のフロントパネルを再現したFP6120なんてものもあります。

開発者はカリフォルニアのロバート・アームストロング氏。HD-6120およびその前身にあたるIM6100 (Intersil) は、もともとPDP-8のCPUをワンチップ化するべく生まれたものでした。しかし実際には細かい相違点がいろいろあって、完全互換にはなっていません。ロバート氏は1983年から、これを克服するためのファームウェアエミュレータ上で開発していたのですが、実際にハードウェアを組むとなると、当時は困難を極めたそうで、ようやく試作機の製作に手をつけることができたのは、1999年になってから。その後同人ハードウェアとして製品化にも成功し、2001年より販売中というわけです。

SBC6120は、現在50人ほどの手に渡っているそうです。ユーザーのなかにはVGAモニタやコンパクトフラッシュなど、今日的なインターフェイスに対応させるための拡張キットを開発・販売している猛者もいるので、これを使えばWEB上でアーカイブされているソフト資産も有効活用できそうですね。ちなみに、「ハムラビ」「ハングマン」「ルナランダー」といったコンピュータゲーム初期の名作は、PDP-8版がオリジナルだったはずです。

[2004/09/03追記] PDQ8なる別の互換機を発見。こちらは2002年発表。FPGAベースです。

ENIAC-on-a-chip

このSBC6120にはじまり、Brown Box, IMSAI 8080, Apple Iと、伝説的機種の復刻がここ数年で急に目立つようになってきましたが、他にも何かないだろうかと探してみたところ、恐ろしく古いものが出てきました。元祖コンピュータのひとつとして有名な、ENIACワンチップ版です。

これはENIAC生誕五十周年を記念して、ペンシルバニア大学電子工学科の学生たちが中心になって作り上げたもので、残念ながら一般には流通していません。1995年にごく少数の試作チップが製造され、博物館や研究機関に寄贈されたのみだそうです。そんなわけで詳細な動作レポートなどは見当たらないのですが、ソフトウェアの供給方法に関しては、ちょっと興味深い説明がありました。ここまで小さくなってしまうと、さすがにモジュール結線によるプログラミングまでは再現できないので、PC上で結線パターンをシミュレートし、それを外部プログラムとして供給する仕組みなのだそうです。

デモシーンの起源

メガデモ方面に興味のあるかたはすでにご存知だと思いますが、先週フィンランドより「Demoscene: The Art of Realtime」と題したデモシーン本が発売されました。いまだ完全には解き明かされていないデモのルーツについても、かなり深く考察しているという話で興味津々なのですが、そういえば、私も以前Byterapersの許諾を得て、「デモシーンの起源」なる記事を翻訳したことがあったなと、ふと思い出しました。埋もれさせておくのもなんですし、いい機会なので改めてご紹介させていただきましょう。

ところで「Demoscene: The Art of Realtime」は、デモシーンについて著したはじめての書籍という触れこみになっているのですが、これはさすがにおかしいだろうということで、ちょっとした議論になっています。少なくともドイツからは、「Hackerland」「Hackertail」の二冊が出ていますし、日本の「Coding Style」(光琳社出版) だって忘れてはいけません。ちょくちょくコメントを戴いているイッギ・ドルーゲ氏によれば、スウェーデンにもLinus Walleij氏による書籍があったそうです (タイトル未確認)。シーンという社会的性質でなく、デモの技術面のみ述べたものまで含めれば、さらに多くなります。しかし英語で全体像をまとめたのは、なんだかんだ言ってもこれが最初ということになるのかもしれませんね。