スウィンドン・コンピュータ博物館

もうひとつの主要な行き先は、ロンドンから国鉄で一時間の場所にある閑静な小都市・スウィンドンでした。目的地は駅からバスで15分ほどの距離にあるバス大学のオークフィールド・キャンパス。ここにはイギリス最初のコンピュータ博物館があるのです。

大学の正面玄関をくぐると、いきなりPDP-8が待ち構えていて、おおっと驚かされます。これで博物館の存在をアピールしているわけですが、はじめて目にしたPDP-8は、ちょうどこちらの右から二番目の写真のような感じで (ということはPDP-8/Mだったのかな) 、意外なくらいコンパクトなその姿を見て、PDP-8がミニコンピュータよりはパーソナルコンピュータに近い存在だったことを、改めて実感させられました。

さて肝心の博物館はというと、構内の一室に間借りしたごく小さなもので、博物館というよりはむしろ展示スペースという趣のものでした (入場も無料)。しかし開設までに十二年に及ぶ年月が費やされたと聞けば、あだや疎かにはできません。じっさい膨大なコレクションから厳選されたという歴代の名品たちは、いずれも見入るだけの価値があるものでした。

展示内容は当然ながらイギリス製パソコンが中心なのですが、何も知らずに見れば、アメリカや日本に劣らない多彩な陣容に驚かされることでしょう。たびたび述べていることですが、イギリスのパソコン市場は、日本ともアメリカとも異なる独自の道のりを歩んできました。そしてそこから生まれた名機たちは、イギリスのみならず、ヨーロッパ各国からロシア、南米、アフリカに至る世界各地で、パソコン文化形成に寄与してきました。しかし日本で語られるパソコン史は、Risc PCとZX81を例外として、ほぼ完全にイギリス製品の功績を無視しています。機会があればこれについても、何かの形で整理してみたいところですね。

博物館にはゲーム機も数多く展示されていました。オデッセイ2からメガドライブまでの代表的な機種は一通り揃っていましたが、アタリ5200は意外にもヨーロッパではほとんど流通しなかったのだそうで、これはさすがに置いていませんでした。各種液晶/FLゲームや「スピーク&スペル」シリーズなども充実しており、このあたりは電源を入れて遊ぶこともできます。しかしこの方面でもっとも興味深いのは、なんといってもヨーロッパ製の珍しい家庭用「ポン」タイプゲーム機の数々でしょう。