Professional Arcade

バリーは1977年までに家庭用コンピュータ/ヴィデオケーム市場へと進出することを決意し、DNAチームはこの開発を担当することになりました。これがプロフェッショナル・アーケードとなるわけです。その設計思想は、最大のライバル機といえるアタリVCSとは対称的なものでした。アタリが拡張性を極力排除し、ヴィデオゲーム機としての性能だけを追求したのに対して、DNAチームは拡張次第でなんでもできるような、非常に柔軟なシステムを目論んでいました。実は1977年秋の試験的な通信販売の段階では、プロフェッショナル・アーケードは「ホーム・ライブラリ・コンピュータ」という名前を冠され、教育デバイス、ゲームマシン、ビジネスツール、ホームコンピュータとしての性質を等しく強調していたのです。「アーケード」の名でヴィデオゲーム機を強く匂わせるようになるのは、翌年以降のことです。

プロフェッショナル・アーケードの中枢部ともいうべきカスタムヴィデオチップもまた、VCSのそれとは性質を異にします。アタリVCSはハードウェアスプライト機能を持たせることにより、ゲーム用に映像の最適化を図ったわけですが、プロフェッショナル・アーケードはより多彩な画像処理を可能にする、いわゆるビットブリットに近い仕組みを持たせ、スプライト処理はソフトウェアに任せています。この方法だとハードウェアスプライトのようなキャラクタ同時表示数の制限がない代わりに、軽快な描画にはより多くの処理速度が要求されるわけですが、DNAチームは十分実用に耐える速度でソフトウェアスプライトを実現させていました。

このチップは本来、アーケード機でも家庭用機でも通用するように設計された多目的チップでした。プロフェッショナル・アーケードの名前は伊達ではなく、実際アーケードでも「GORF」「ウィザード・オブ・ウォー」「ロビー・ロト」ほかいくつかのゲームがこのチップを使用しています。「ロビー・ロト」のROMイメージは幸いにも合法的にフリー公開されていますので、MAMEを用いれば、このカスタムチップの性能を簡単に確認することができるでしょう。

ただしアーケードで使用される場合は、大量のグラフィックRAMを必要とする高解像度モード (320x204) で動作していました。このモードはRAMの少ないプロフェッショナル・アーケードでは封印されているのですが (いずれRAMが安価になるとは想像していなかったのでしょう)、ミッドウェイはその真価を引き出すべく、プロフェッショナル・アーケードをビジュアル志向の本格的なホームコンピュータとして使えるようにするためのアドオンユニット・ZGRASS-100の開発も進めていました。これはバリーが家庭用機ビジネスから撤退したため未完に終わりますが、1980年にはデータマックスという会社が、同じチップセットを用いたUV-1という業務用コンピュータを開発し、CGアーティスト向けに少数を製造していたようです。

ちなみにプロフェッショナル・アーケードはサウンドにも特徴的なカスタムチップを用いていました。これは最高3音の矩形波を同時出力するもので、その点では同時期に誕生したPSGチップに近いものですが、非常に強力なノイズジェネレータを搭載しており、往時のどの音源チップよりも豪快かつ表情豊かな効果音を発することができるようになっていました。