カジュアルゲームの現状

欧米におけるカジュアルゲーム人気はいま、そういう賭けに踏み切らせるのに十分なだけの盛り上がりをみせています。日本ではまだまだ軽視されている感の否めないカジュアルゲーム市場ですが、欧米や中韓ではMMOGに次ぐ第二のオンラインゲーム市場として、ここ数年にわたって急成長を遂げています。もともと欧米ではオンラインゲーム販売のビジネス基盤がある程度固まっていて、古くはシェアウェア発の「Wolfenstein 3D」や「Doom」といった作品が大きな成功を収めていたわけですが、ここに来て再びその方法論が見直されているのには、おもに三つの理由があります。
1) 市場規模の拡大
従来のカジュアルゲーム市場は、webブラウザ上でプレイする広告収入依存型のフリーゲームが主流でした。しかしここ2年ほどの間に、ふたつの新しいビジネスモデルが定着したことで新局面を迎え、市場規模は加速度的な膨張をみせはじめたのです。

  1. ダウンロード販売モデル (米国型):
    カジュアルゲームというジャンル名は知らなくとも、Popcapのゲームをご存知のかたは多いでしょう。まずデモ版をフリーで提供し、気にいったら完全版をダウンロード購入してもらう―――という販売モデルが、カジュアルゲームに対しても有効であることを知らしめたのが彼らでした。「フィーディング・フレンジ」もこの方式でミドルヒットを飛ばしたゲームです。ダウンロード版を実際に購入しているのは、プレイヤ全体の2%にすぎないとする統計もありますが、このモデルは欧米を中心に、着実に成長を続けています。
  2. webプレイモデル (韓国型):
    韓国発祥のアバタービジネスに、webブラウザ用のカジュアルゲームを取り込んだものです。その最大手であるNHNは先日、韓国市場はすでに飽和点に達しているとの見方を示していますが、中国方面での成長は著しく、中国最大のオンラインゲームパブリシャ・盛大もまた、カジュアルゲームのアクセス人口が、いまやMMORPGの半数近くにまで達していることを伝えています。もちろんMMOGとは連続プレイ時間も課金スタイルもまったく異なるので、直接比較の材料にはなりませんが、興味深い傾向であることは確かでしょう。
2) 中年・女性プレイヤ層の開拓
今年2月、「オンラインゲームに費やす時間は40代以上の女性が最も長い」といった記事が日本に紹介され、ちょっとした驚きをもたらしました。悲しいかな、日本ではカジュアルゲーム市場についての情報があまりに少ないため、記事の信頼性を疑うような反応ばかりが目立ちましたが、これを補強する調査報告はほかにもいろいろと出ています。
  • 「退屈している主婦たちが、コアなゲーム層とは違ったオンラインゲーム市場の成長を支えている。カードゲーム、ソリテア、パズルといったスキル志向のゲームの消費者は、65%が女性である」(BBC News, 10 June, 2004)
  • 「ゲームサイトを最も利用しているのは、意外にも35〜49歳の女性であることが分かった。5月中にゲームサイトを訪れた4600万人のうち、15.2%がこの年代の女性で、ゲームが好きそうな12〜17歳の男子(9%)や18〜24歳の男性(4.6%)を大きく上回った」(Hot Wired Japan 2004年6月17日)
  • 「カジュアルゲーマの92%は30歳以上」(WSA Newsbytes, 7.2.04)
またダウンロードゲームに関しても同様の傾向がみられます。これまでゲームプレイヤ層として認知されていなかった中年女性が、いま新しい顧客層として有望視されていることは、もはや疑うべくもありません。この方面の需要は日本でも水面下で高まりを見せており、あれこれ調べていたら「奥様とネットゲーム」なんていう2ちゃんねるのスレッドにも出くわしました。

3) クオリティの向上
カジュアルゲームの大多数はアマチュアあるいはセミプロによる作品です。しかしPopcap式のダウンロード販売モデルがビジネスとして成立して以降は、中小ソフトハウスもこの方面に取り組みはじめるようになりました。またいっぽうで、大手からスピンアウトしたカジュアルゲームプログラマも現れはじめています。パッケージゲームとのクオリティ格差は確実に埋まりつつあるといえるでしょう。