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バベッジのゲームマシン (1)

コンピュータはゲームマシンとして使うことができる―――この事実に最初に気がついたのは、コンピュータの父チャールズ・バベッジその人でした。彼が解析機関というプログラミング可能な自動計算機を設計していたことは有名ですが、それとは別に解析機関の機構…

Elliott Automation

ただ、ひとつの例外として、イギリスにも早くからトランジスタによる小型化を意欲的に進めていたエリオットという会社がありました。フェランティがイギリスのIBMに喩えられるとすれば、こちらはさしずめイギリスのDECといったところです。彼らは1963年には…

イギリスの没落

しかしATLASは、イギリス製コンピュータの最後の輝きとなりました。フェランティは改良型のATLAS IIを発売したあと、大型コンピュータ事業から撤退します。その資産は1963年にICT (のちのICL) へと売却されました。技術的には絶頂期にあったコンピュータ部門…

トランジスタ時代のイギリス

キルバーンのグループでは、MEGの開発と並行してもうひとつの別のプロジェクトが動いていました。新素材・トランジスタを使って、より小型で省電力なコンピュータを構築しようという試みです。このプロジェクトを主導したのはリチャード・グリムスデイルで、…

Baby Mark I 〜 Mercury

大戦後、ウイリアムズはアメリカにおけるENIACの開発状況を見聞し、コンピュータ開発者たちが効率的なメモリユニットの発明を待ち望んでいることを知ります。彼はレーダー用のオシロスコープをメモリユニットに転用しようという動きがあると聞き及び、自らも…

Ferranti と Manchester 大学

フェランティは歴史の古い電気製品メーカで、その創業は1882年にまで遡ります。設立者のセバスチャン・ジアーニ・ド・フェランティは幼いころから電気工作に才をみせ、13歳の頃にはアーク灯による街路照明を発明。その後16歳で民生用発電機を共同発明して財…

Ferranti ATLAS テスト用ドキュメント ebayに出品

イギリスのコンピュータ史に詳しい人々はよく、一般的なコンピュータ史があまりにアメリカ偏重で書かれていることに対する不満を口にします。もちろん第二次大戦前後のイギリス人による功績は、アラン・チューリングの登場にはじまりEDSACの完成に至るまで、…

Floppy ROMの時代

全編チップチューンのレコードをいち早くリリースしていたアーティストとして一部で有名な8-Bit Construction Set。アナログ盤にはアタリ800用のソフトがオーディオデータとして収録されていたりするのですが、それがなぜか今頃slashdotで話題になっています…

第二次世界大戦が育んだヴィデオゲーム技術

この特許はレーダー技術と深い関わりがあります (詳細は後日改めて)。そういえば「テニス・フォー・ツー」のウィリアム・ヒギンボザム氏も、もとはMIT放射線研究所でレーダー研究に従事していた人物でしたね。オディッセイの生みの親であるラルフ・ベア氏も…

ソニーの試作テレビゲーム (197x)

Classic Video Game Station Odysseyより、国内ではじめて家庭用テレビゲーム機を試作したのはソニーだったのかもしれないという、非常に刺激的なお話です。もっともこれは文字通り「テレビを用いるゲーム装置」であって、今日我々の知るデジタルなゲーム機…

Reaper vs. Creeper

前回ご紹介した「クッキーベア」ですが、一時期の史料では、これを指して世界最初のコンピュータワーム/ウィルスとしていることがあったそうです。(一部のハッカー以外には) 長きにわたって「感染」元が謎に包まれていたようですから、そう信じてしまったの…

Cookie Bear 〜 Cookieの起源

ジョークプログラムに関連して、もうひとつ。webブラウザなどでユーザー情報を保存する手段として、Cookieというものがあります。なぜCookieと呼ばれるようになったのかについては諸説あって、日本ではおみくじクッキー (fortune cookie) 由来説がよく知られ…

セックスと切腹

スティーヴン・レビー氏は、労作「ハッカーズ」を仕上げる2年前に、その導入編ともいうべき「バイナリ世界の美しき執念」というコラムを発表していました。そこにはスタンフォード大学の学生が作ったという、「Seppuku」というジョークプログラムが出てきま…

スプライトの起源 (4)

前回までに取り上げたスプライトチップたちは、いずれもヴィデオゲーム機のために開発されたものでした。しかしその後、競争の舞台はホームコンピュータの世界に移っていきます。アップルIIの成功により、ホームコンピュータが高級ゲーム機としても注目され…

スプライトの起源 (3)

インテルが世界最初のスプライトチップ・8244を完成させた頃、アタリは新型家庭用ヴィデオゲーム機・VCSの開発に着手していました。その最初の試作機をアタリのグラスヴァレー・チームが完成させたのは、1975年終わり頃のことです。時期的にはアーケードの「…

ソ連の独自コンピュータ技術の衰退

先日の「プロジェクト・オーガス」に続いて、再び航天機構より。サイバネティクス弾圧期以降の紆余曲折が詳しく語られています。ソ連のIBM360クローンはリバースエンジニアリングで生み出されたものだと思い込んでいたのですが、実は背後に英独企業の姿があ…

スプライトの起源 (2)

第一回では、アタリがいかにしてスプライト技術を完成させ、敷衍させるに至ったかを解説しました。アタリが存在しなければ、あれほどの勢いでスプライト技術が発展・普及することはなかったでしょう。しかし実をいうと、そのアタリも唯一無二の発明者だった…

スプライトの起源 (1)

背景グラフィクスの処理とキャラクタグラフィクスの処理をハードウェアレベルで切り離し、あとから合成する―――という、いわゆるハードウェア・スプライト技術の確立は、ヴィデオゲーム史上もっとも重大なブレイクスルーのひとつに数えられます。1980年代のゲ…

Sorcerer

エキシディは家庭用ヴィデオゲームにはまったく興味を示しませんでした。しかしパーソナル・コンピュータ産業が勃興すると、これにはいち早く呼応し、1978年にZ80ベースのなかなかユニークなマシンを送り出しています。それがここでご紹介するソーサラーです…

Car Polo

「サーカス」「ロボット・ボウル」に次いでアイヴィ氏が手がけたのは、4人同時プレイ可能なカー・サッカー「カー・ポロ」 (1977) です。それほどヒットはしなかったようですが、これもなかなかの意欲作でした。わずか4キロバイト未満のプログラムを駆使して…

Circus

「デス・レース」の翌年、アイヴィ氏はマイクロプロセサの使用技術を身に付け、さらなる成果を披露しています。そのひとつが、「デス・レース」とならぶエキシディの代表作、「サーカス」でした。「サーカス」は一般的には「ブレイクアウト」(ブロックくずし)…

Death Race

アイヴィ氏がエキシディで手がけた最初の作品は、「デストラクション・ダービー」 (1975) です。これはアタリが同年にリリースした「クラッシュ・アンド・スコア」 (1975) にヒントを得たと思われる、見下ろし視点のカー・アクションでした。「クラッシュ・…

Clean Sweap

1974年6月、ラムテックはアイヴィ氏の手がけた最初のヴィデオゲームを世に送り出しました。このころアタリ以外のメーカはまだ「ポン」の亜流作りに終始していたのですが、アイヴィ氏はその枠に収まらないユニークなゲームをいちはやく完成させています。のち…

語られざるヴィデオゲームの革新者―――エキシディとハウエル・アイヴィ

前回エキシディについて少し触れましたが、この会社に関する系統だった解説は、考えてみるとまだ誰も著していないのではないでしょうか。日本では一連の残虐ゲームと「サーカス」くらいしか知られていないメーカではありますが、卓越した技術力で1970年代を…

ソヴィエト・ロシアのパソコン黎明期

旧ソ連に本格的なホームコンピュータ時代の波が訪れたのは、やはり冷戦終結期のことでした。しかしヴィシェグラード各国 (ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー) に比べると、市場の活性化には少し遅れをとっています。これは市場開放そのものが遅…

SD-050 〜 ヨーロッパの隠れたベストセラーゲーム機

アタリVCSやインテリヴィジョンの上陸が遅れたため、ヨーロッパでは1982年〜1983年ごろまで「ポン」人気が持続していたといわれています。その間にヨーロッパの「ポン」タイプゲーム機は独自に発展を遂げ、PC-50xというカートリッジ規格を生み出しました。そ…

ペニー・アーケード 〜 アーケードの起源

アメリカには「ゲームセンター」という言葉はなく、日本のゲームセンターにあたるものは「アーケード」と呼ばれている―――そういうことを日本のヴィデオゲームファンが意識しはじめたのは、1980年代中頃のことだったと記憶しています。現在はもうかなり定着し…

デモシーンの起源

メガデモ方面に興味のあるかたはすでにご存知だと思いますが、先週フィンランドより「Demoscene: The Art of Realtime」と題したデモシーン本が発売されました。いまだ完全には解き明かされていないデモのルーツについても、かなり深く考察しているという話…

ENIAC-on-a-chip

このSBC6120にはじまり、Brown Box, IMSAI 8080, Apple Iと、伝説的機種の復刻がここ数年で急に目立つようになってきましたが、他にも何かないだろうかと探してみたところ、恐ろしく古いものが出てきました。元祖コンピュータのひとつとして有名な、ENIACの…

TABキーの語源 (RetroPC.NET)

缶飲料のプルタブと同じ「Tab(タブ):つまみ」です。 文字入力時には、ひとつまみ分くらいカーソルが移動します。つまみとしての "tab" は、引っぱる、掛ける、開ける、情報を引き出す…といった操作をするための (平たい) でっぱりという、わりと抽象的…