Ernst Zermelo のチェス定理

話は少し逸れますが、アヘドレシスタが披露された翌年には、「チェスには先手必勝か、後手必勝か、必ず引き分けになる戦略が存在する」ことを証明した、エルネスト・ツェルメロのゲーム定理も発表されています。ツェルメロはチェスのプロブレムが数学的に検…

Ajedrecista

Ajedrecista (初代). 実物は現在もマドリードの高速道路・運河・港湾エンジニア協会に可動状態で保存されているという。写真は "From Analytical Engine to Electronic Digital Computer: The Contributions of Ludgate, Torres, and Bush" (Brian Randell,…

Leonardo Torres y Quevedo

いっぽう20世紀初頭には、解析機関の具現化にチャレンジする人々も、何人か現れていました。バベッジの実子である退役軍人ヘンリーや、アイルランドの会計士ルドゲイトなどです。そのなかでただ一人、バベッジのゲーム研究にもスポットを当てたのが、スペイ…

バベッジのゲームマシン (3)

バベッジのゲーム研究 (前回参照) に追随しようという動きは、彼の死後何十年ものあいだ不在でした。その間「ターク」の焼き直しのような人形がいくつか作られているくらいですから、時代は停滞するどころか、むしろ逆方向に進んでいたといったほうが適切か…

オートマトン時代の終焉

バベッジの当初の目標は、むろん機械にチェスをプレイさせることでした。しかしミニマックス法でチェスをプレイする場合には、膨大なメモリが必要となります。フルスペックでも1000個の数値 (10進数50桁) しか記憶できなかったとされる解析機関は、明らかに…

解析機関

バベッジは階差機関の挫折と前後して、プログラム方式を採用した次世代の自動計算機、すなわち解析機関の設計に着手しています。そのパーツを一通りデザインし終えたあと―――それはちょうど政府が階差機関を見放した頃でもあるのですが―――彼は20年前にやりか…

Tit-Tat-To

「ターク」の虚実は、バベッジにとってそれほど切実な問題ではありませんでした。彼はそれよりもむしろ、自分なら実際に自動チェス人形を作ることができるかどうかという問題に興味を持ちます。バベッジが「ターク」に影響を受けてゲーム研究を始めたことを…

バベッジのゲームマシン (2)

バベッジが自動チェス人形「ターク」と対面したのも、やはりメルツェルによるイギリス巡業 (前回参照) においてでした。このときバベッジは28歳。王立協会の特別メンバーとして、さまざまな数学/物理学研究に勤しんでいた時期です。当時発表した論文のなかに…

機械は判断しない

19世紀初頭のイギリスでは、精巧なオートマトンに対して、単なる物珍しさ以上の関心が集まっていました。完成度の高い人形は、東インド会社を通して高値で中国に売り捌くことができたからです。ケンペレンの人形に対してこの国で一歩踏み込んだ研究がなされ…

メルツェルの象棋さし

バベッジが「ゲームをする機械」にこだわるようになった背景には、当時さかんに製造されていたオートマトンと呼ばれる精巧な自動人形たちの存在があります。あたかも生命あるもののように振舞う人形たちの姿は、少年期のバベッジに終生忘れえぬほどのインパ…

バベッジのゲームマシン (1)

コンピュータはゲームマシンとして使うことができる―――この事実に最初に気がついたのは、コンピュータの父チャールズ・バベッジその人でした。彼が解析機関というプログラミング可能な自動計算機を設計していたことは有名ですが、それとは別に解析機関の機構…

海外プラグ・アンド・プレイ機の販売動向

pnp

海外プラグ・アンド・プレイ機市場でどういうものが売れているのかは、もうひとつ把握しにくいわけですが、あちらでも市場動向を分析した資料なんかはまだ出てきていないようです。そこで試しにamazon.comの販売ランキングをリスト化してみました (Computer …

ATARI FLASHBACK 2.0 発売決定

昨年12月に、アタリのプラグ・アンド・プレイ復刻機「7800フラッシュバック・クラシック・ゲームコンソール」がちょっと苦戦気味な様子をお伝えしましたが、結局メインターゲットであるカジュアルゲーマー層にとって移植精度はたいした問題ではなかったらし…

GameTap オープン告知

タイムワーナー資本のターナー・ブロードキャスティングなる企業が、2005年秋にGameTapというゲーム配信サービスをスタートすると発表しました。公式アナウンスを読む限り、レトロゲームを主体とするわけではなさそうですが、GameSpotのニュースは「MAMEエミ…

メガドライブプレイTV2/3 国内発売

セガトイズといえば、以前ご紹介したラディカのPlayTV Legends Sega Genesis Volume 2およびStreet Fighter II Play TVが、国内でも正規発売されていたのですね。第1弾に対する肯定的評価は、日本ではあまり目にしなかったのですが、ひそかに結構売れていた…

Advanced PICO Beena 今夏発売

エデュテイメントという言葉が流行らなくなってずいぶん経つので、もうこのジャンルは死滅したのかと思われがちです。たしかに10代以上を対象とする教育ゲーム研究は、長い間特筆するほどの成果を上げられずにいるわけですが、逆に幼児向けの分野におけるエ…

Ferrantiとパーソナルコンピュータ

パーソナルコンピュータ時代の到来とともに、イギリスのコンピュータ産業が勢いを取り戻すと、今度は半導体メーカとしてフェランティの名前を見ることができるようになります。フェランティはイギリスでもっとも早くから半導体に注力していた会社でもありま…

Elliott Automation

ただ、ひとつの例外として、イギリスにも早くからトランジスタによる小型化を意欲的に進めていたエリオットという会社がありました。フェランティがイギリスのIBMに喩えられるとすれば、こちらはさしずめイギリスのDECといったところです。彼らは1963年には…

イギリスの没落

しかしATLASは、イギリス製コンピュータの最後の輝きとなりました。フェランティは改良型のATLAS IIを発売したあと、大型コンピュータ事業から撤退します。その資産は1963年にICT (のちのICL) へと売却されました。技術的には絶頂期にあったコンピュータ部門…

トランジスタ時代のイギリス

キルバーンのグループでは、MEGの開発と並行してもうひとつの別のプロジェクトが動いていました。新素材・トランジスタを使って、より小型で省電力なコンピュータを構築しようという試みです。このプロジェクトを主導したのはリチャード・グリムスデイルで、…

Baby Mark I 〜 Mercury

大戦後、ウイリアムズはアメリカにおけるENIACの開発状況を見聞し、コンピュータ開発者たちが効率的なメモリユニットの発明を待ち望んでいることを知ります。彼はレーダー用のオシロスコープをメモリユニットに転用しようという動きがあると聞き及び、自らも…

Ferranti と Manchester 大学

フェランティは歴史の古い電気製品メーカで、その創業は1882年にまで遡ります。設立者のセバスチャン・ジアーニ・ド・フェランティは幼いころから電気工作に才をみせ、13歳の頃にはアーク灯による街路照明を発明。その後16歳で民生用発電機を共同発明して財…

Ferranti ATLAS テスト用ドキュメント ebayに出品

イギリスのコンピュータ史に詳しい人々はよく、一般的なコンピュータ史があまりにアメリカ偏重で書かれていることに対する不満を口にします。もちろん第二次大戦前後のイギリス人による功績は、アラン・チューリングの登場にはじまりEDSACの完成に至るまで、…

[04/09] フェランティ製ゲートアレイとエリオットについて加筆訂正

世界最大のファミコン・コントローラ

これも一部ではエイプリルフールジョークとして紹介されていたものですが、どうもそういうわけではなさそうです。米・G4TV (ゲーム専門テレビ局) の「アタック・オブ・ザ・ショウ」という番組で3月28日にお目見えした巨大なファミコン・コントローラなのです…

8-bit/16-bit April Fool

今年の海外レトロ界隈を賑わせたエイプリルフールジョークたちです ([4/10]更新)。・「ポン」専用のプロジェクタ式ゲーム機発売発売元がThinkGeekということで、本当に出ていても多分誰も驚かないと思いますが―――750ドルはないだろうというオチですね。・IGN…

Amstradのプラグ・アンド・プレイ機はありえない?

pnp

C64 DTVの成功によって、いよいよパソコンゲームにもプラグ・アンド・プレイ化の道が拓かれたといえますが、いまのところまだ他社が続こうとする姿は見えません。これはどうしたことかということで、「レトロゲーマー」誌の記者がアムストラッド社員・クリフ…

KMOS, Amiga Inc.に社名変更

昨年夏にアミーガ・インクを買収した謎多き企業・KMOSが、3月16日付で社名をアミーガ・インクに変更しました。あわせてホームページも改装されていますが、アミーガ・インクの元では今後クラシックAMIGA OSを一切ディストリビュート/サポートしない (開発を…

Ultracade Technologies, MAME商標権出願取り下げ

MAME開発チームの重鎮、アーロン・ジャイルズ氏のホームページにおいて、先日お伝えした MAME商標権出願の件が取り下げられた旨が発表されています。かわってMAMEのオリジネイタであるニコラ・サルモリア氏による出願が行われたとのことで、いずれにせよ今後…

最近レスポンスが滞りがちでご迷惑おかけしております。所用につきしばらくお時間をいただいています。